背景
再発、転移、あるいは切除不能の消化管間質腫瘍(Gastrointestinal stromal tumor;GIST)の治療の原則は、イマチニブの投与です。イマチニブは、これらのGISTに対し、腫瘍縮小効果や症状改善効果を示すだけでなく、その予後(Overall Survival: OS)を改善することが確かめられました。しかしながら、イマチニブの治療効果は限定的で、PFS (Progression-free Survival: PFS)の中央値で約2年の治療効果しか持ちません。すなわち、治療経過中にイマチニブに対する耐性が出現し、イマチニブの予後改善効果は限定的となっています。これまでのretrospective studiesでは、治療効果を認めるGISTに対し、残存病変の完全切除を行うと、少なくとも切除しない場合よりPFSを改善する可能性が示されています。
一方、別のretrospective studiesでは、全身性耐性には外科治療のメリットは全く認められないものの、部分耐性となったGISTに対しては、外科治療介入を行い、耐性病変の完全切除を行えば、その予後はPFSで6~12ヵ月程度改善すると報告されています。
これらを総合すると、進行・再発GISTに対しイマチニブ治療を行い、SD (Stable Disease)以上の治療効果が得られた場合、残存腫瘍が安全に完全切除可能であればこれらを完全切除するか、あるいは、部分耐性出現時にイマチニブ耐性部分を切除しイマチニブ治療を継続すれば、進行・再発GIST患者さんの予後を改善する可能性があります。
そこでEORTCや中国でこれを検証する臨床試験が組まれました(図1参照)。残念ながら、両臨床試験とも症例のリクルートが悪く、どちらも中止になりました。したがって、今後イマチニブ治療中の外科治療介入の臨床的意義に関するエビデンスが前向き試験で出てくる可能性は全くなくなりました。
日常診療ではそれほど多く出会う疾病状況ではありませんが、数限られた治療しか受けられない進行GIST患者さんのためにはエビデンスが必要な分野でもあります。

目的
この後方視的研究は、このようなイマチニブ治療中の進行GISTへの外科的介入の意義を明らかにし、その安全性と有効性、そして有効な範囲を明らかにするために、これまで日本国内で行われたイマチニブ治療中の外科手術例をretrospectiveに集積し、進行GIST患者さんへの集学的治療のエビデンスと意義を明らかにすることを目的としています。
研究デザイン
多施設共同後ろ向きコホート研究
集積対象症例
- 初回再発時外科切除群(O群:Operation for first recurrence)
- 初発・再発時イマチニブ投与し、イマチニブ治療中の残存病変切除を行った群(S群:stable lesion-resection group)
- 初発・再発時イマチニブ投与し、イマチニブ治療中、イマチニブ部分耐性と診断され、耐性部分の外科切除目的に部分耐性(+併存病変)の手術を行った症例(R群:resistant lesion-resection group)
- 初発・再発時、ターゲット病変(10mm以上の測定可能病変)数が 5個以内で、かつ②と③の条件を満たすが、外科切除をしなかった症例(M群:Medical treatment group)
お問い合わせ
西田 俊朗 /桑田 照子
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